「安全な野菜」
「福島の野菜・果物は放射性物質の検査をやって基準値以下ものを出荷しています。しかもほとんど全ての生産物がNDですので、福島の野菜と果物は安全だということは保証できます。だけれども安心というのはそれを受け取った生活者の方の心のことなのですね。それでも心配だという方には安心ですとはいえないです。安全ですとはいえますが安心は受け手の気持ちのことだと思っています」
郡山の生産者 濱津農場 濱津さんにバスの中で聞いたお話です。
ものすごく腑に落ちました。
さてホテル華の湯さんのお話しに戻ります。
ランチを楽しんだ後、ホテルの会議室に移動してこの福島でご苦労されてきた皆様のお話しを聴かせていただきました。
華の湯さんの菅野常務のお話では、このホテルが建っている磐梯熱海の地盤は非常に堅牢で、あの震災の後もライフラインもインターネットもダメージがなかったため、あの震災の時にはこのホールが電力会社やメディアの基地となったこと。
お話を伺ったこの会場がまるでヒューストンの宇宙ロケットの司令室のような状態になっていたそうです。
華の湯 斉藤総料理長のお話は自分はこの日一番面白くて印象に残ったお話しでした。
震災前は温泉旅館の総料理長として和食の王道を守ってきた自分が、自然に必然にお客様のニーズを考えて作る料理と食材を変えていったこと。
読んでた資料も和食の専門誌だったのが、オレンジページなど普通の主婦目線になっていったということ。
一番印象に残ったのは、そのように作る料理を買えようと思ってから、料理のアイデアが溢れるように湧き出て来ると楽しそうにお話ししていたことでした。
楽しく作っていただく料理は食べても楽しく美味しいですよね!
そしてその楽しくおいしい料理を支えているのが、地元の農園「空ちゃん農園」の二瓶さんです。
二瓶さんのお話しは華の湯さんとの出会いのお話しでした。
空ちゃん農園では特にこだわってどんな農法にしようとか考えて行き着いたのではなく、自然と有機の土づくりになっていったそうです。
その土で作られた野菜を華の湯さんが気に入って、ある日から気が付くと直売所の野菜が丸ごと無くなっているようになったそうです。
「うちの野菜をこんなに買っていくのは何処の誰なの?」と二瓶さんが意を決して野菜を買いにきた菅野常務と斉藤総料理長に声をかけて、今の関係が出来上がったそうです。
素晴らしい話しだと思いました。
どうしたらお客様に戻ってきてもらって、また楽しんでもらえるかと考えて悩んでいるホテルの経営者と、今までの縛りを打ち破って新しい料理を作っていくことを本当に楽しんでいる料理人と、美味しい野菜を作って地消地産を支えている生産者さん。
福島でこのように前向きに取り組んでいる事例を知れて良かったです。
そしてこの後に「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」の取組みとやってきたことについて渡邊とみ子さんと高橋トク子さんのお話しを聴きました。
あの震災でちりじりになってしまった福島農家の方々。
地元に残った方、やむなく他所へ移った方、それぞれの事情で致し方ないことですが、福島の野菜と野菜で作られた伝統の加工品もこの時から失われてしまうことになりました。
「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」は普通に農家のかーちゃんとして作った野菜から喜んで食べてもらっていた凍み大根などを作っていた渡邊さんと福島大学の塩谷教授が手を取って、福島の野菜農家の日常を取り戻していく(取り戻せているわけではないですが)お話しでした。
19歳の時にお見合い結婚をして、家事ごとだけをしていた渡邊さんが、震災をきっかけに何故だかこのようなプロジェクトの中心人物となってしまい、苦労されてきた話しは涙ながらのお話しでした。
なんとかしなくてはという想いで渡邊さんがなさってきたことは岩波新書の「食と農でつなぐ 福島」という本に詳しく書かれています。
この後、郡山ブランド野菜の生産に尽力されている鈴木光一さんの鈴木農園を訪問しました。
郡山でオリジナルなブランド野菜を作るのにも当初は大変なご苦労があったようです。
この郡山ブランド野菜は地元の若手の農家さんで作る「あおむしくらぶ」と千葉県の和洋女子大学 中島教授の監修の元で進められているそうです。
ここでも福島野菜ソムリエコミュニティの皆様のアテンドで収穫体験と、福島野菜のお話しを聴かせていただきました。
こちらの鈴木農園さんは新しい野菜にも積極的に取り組まれているそう。
福島野菜をアカデミックに継承するだけでなく、もっと発展的に考えている農家さんだということが解ります。
たとえば試食させていただいた食べるひょうたん!
マイクロキュウリなど。
見たこと無い野菜作りを試みている生産者さんでした。
今回福島を訪れて私が思ったこと。
たいへんなことが起きたのは知っていましたが、やはり福島の人の話しを聞いて、それは思っていた以上に大変なことだったのだと改めて解りました。
とくに土とともに生活している野菜の生産者さんは大変な苦労をされていたこと、改めて身に染みました。
「福島の土がいかに豊かで、ありがたいものだったのか、失って初めて解りました」という濱津さんのお話しが今も頭に残っています。
それでもなんとかしていきたいという想いで動いてきた福島の方に直接お会いしてお話しを聴くことができました。
チームふくしま。の事務局の皆様、福島の野菜ソムリエコミュニティの皆様、今回は本当にありがとうございました。
その1はこちら。
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亀岡 浩美 (木曜日, 11 9月 2014 08:10)
レポート拝読させていただきました。今回は都合つかずでしたが、ますます参加出来なかったことが残念!
安心の話は、仰る通り、低線量に関する科学的データのない今、各自の基準で許せるかどうか、になっています。測定も時間とコストと費用と効果で折り合いをつけざるを得ずで、そこにも各自の価値判断を求められるのが現状です。測定量は大根の500gとハーブの500gでは全然違うので、農家さんのお気持ち幾ばかりかです。
寄り添う、繋がるって口で言うのは簡単で、軽くも思えてしまいますが、今回のように見て聴いてがその第1歩ではないでしょうか。私も次回は是非参加したいと思っています。
思いが伝わるレポート、ありがとうございました!(^^)!
古川雅己 (月曜日, 29 9月 2014 23:19)
亀岡さん、コメントありがとうございます。
今回の現地視察で、自分で見て聴いたことをそのままお伝えするのが一番の応援かなと思いました。
自分的にダメだったらダメだと書こうと思っていましたが、全く生産者さんの真剣な取組みと責任感の強さに心打たれました。
そこに至る悩みや苦しみも垣間みることできました。
今回の現地視察に参加できて「なんとなく福島産は〜」という方にきちんとお話しできるようにちょっとだけなったかもと思います。